このサイトは、画面を 
縦にしてご覧ください。
揚げ油を使いこなす!揚げ方や処理・保存・再利用方法まで

揚げ油を使いこなす!揚げ方や処理・保存・再利用方法まで

投稿者:ライター 井澤佐知子(いざわさちこ)

監修者:管理栄養士 黒沼祐美(くろぬまゆみ)

鉛筆アイコン 2021年6月23日

カラッと揚がった天ぷらやこんがり香ばしいフライ、コロッケなど、自分で作るできたての揚げ物は格別に美味しい。しかし、揚げ物は料理初心者にとって決して簡単な料理ではない。油の選び方、揚げる温度、捨て方などなど、ぜひ正しく会得したい。揚げ油を使いこなすにはどうすればいいのか、揚げ油の使い方について説明する。

  

1. 揚げ油とはどんな油?オリーブオイルはおすすめ?

揚げ物をするにあたって、まず首をかしげるのはどんな種類の油を使うかではないだろうか。近年は油の種類が増え、料理初心者にとってはその選択に頭を悩ませることが多い。近年需要が高まっているオリーブオイルは揚げ物に向くのだろうか。揚げ油に使用するタイプ、それぞれの特徴について説明する。

揚げ油におすすめの油

まず揚げ油とは、その名の通り揚げ物をする際に使用する油をさす。油の種類は多いが、その中でも揚げ物のために向く油にはどのようなものがあるのだろうか。

サラダ油

生食することも目的のひとつとして、オリーブオイル、ダイズ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、米油を原料に香味良好に作られている。低温でも濁ったり凝固したりせず、舌触りのよさが特徴である。こうしたことからも、揚げ物には向いている油である。ただし、高温にさらされると質が低下するデメリットもあるため、繰り返しの使用は控えたほうがよい。

キャノーラ油

揚げ物の油の代名詞となりつつあるキャノーラ油は、遺伝子工学から生まれたセイヨウアブラナを原料に作られる油である。サラダ油よりも高温に耐えうるキャノーラ油は、まさに揚げ物向きといってよいだろう。

ベニ花油

癖のない風味のベニ花油も揚げ物向きである。軽い風味であるだけではなく高温に強いことも、揚げ油として使うのにはメリットである。

揚げ油向きの油の種類を理由とともに紹介

次は、揚げ物に向かない油を紹介しよう。正しくは、揚げ物全般に向かないという意である。ベストの油の選択は、調理法によって異なるのである。

ごま油

ごま油は、ごまの種子を圧搾すると得られる半乾性脂肪油である。ごま油ならではの香りは、揚げ物すべてに向いているとはいえない。しかし、天ぷらなどの揚げ物にはほどよい香りがよいアクセントになり専門店でもよく使用される。風味が強くなりすぎないために、市販されているごま油の中からそれにふさわしいものを選択する必要はあるだろう。

オリーブオイル

地中海式食事法がユネスコの無形文化遺産になったことで日本でも需要が高まっているオリーブオイル。ドレッシングなどでよい香りを楽しめるエキストラヴァージンオイルは、高温になると香りや質が落ちてしまう。オリーブオイルを揚げ物に使う場合には、香りや味わいを調整したピュアという精製タイプがおすすめである。

2. 揚げ物をカラッと揚げるには揚げ油の温度が重要!

料理の中でもとくに、難易度が高いと思われがちなのが揚げ物だ。レシピ通りに作っているはずなのに衣がベタッと張り付き、食感よくカラッと揚がらないといった経験をした人も多いのではないだろうか?油の温度は低すぎても高すぎてもいけない。食材に合った温度で揚げることが成功の秘訣だ。

油の温度が大切な理由

まずは揚げ物の原理をおさらいしてみよう。揚げ物にする食材や衣には水分が含まれている。これを高温の油で蒸発させ、カリッとさせることで揚げ物となるのである。150~180℃の油を使用することで、沸点が100℃の水分が蒸発するのである。当然のことながら、揚げる食材によって油の温度や調理時間は異なってくる。たとえばコロッケは170~180℃で2~3分、唐揚げは同じ温度幅で5~6分、とんかつは170℃で5〜6分などが一般的である。油の温度が適切でないとカリッと揚がらず失敗作となる可能性もある。揚げ物を美味しく仕上げるためには、油の温度管理と適切な調理時間が最重要事項なのである。

温度キープには油の量も重要

揚げ油の処理を考慮すると、油の量は節約したいのが本音であろう。しかし揚げ物の際に油の量を節約しすぎると、具材を入れたとたんに油の温度が下がり仕上がりがまずくなる可能性が高い。温度を安定化させて揚げ物をカラッとさせるためには、油の量は鍋の底から2~3.5cmが適宜である。同様の理由で、油に入れる具材の量も鍋の面積3分の1から2分の1にとどめるのが無難なのである。

3. 揚げ油の温度を確認する簡単な方法

食材によって異なるものの、揚げ物に適した温度は通常150~190℃である。揚げ物の成功の秘訣は、食材に見合った温度で揚げることが第一に挙げられる。それでは、肝心の油の温度を見極めるにはどのような方法があるのだろうか。

低温(150~160℃)

まずは低温とされている150~160℃について説明する。油を中火にかけてから2~3分後の状態が低温である。根菜類や冷凍食品など、じっくりと中まで火を通したい場合にはこの温度が望ましい。その状況を知るには以下の状況を確認しよう。
  • 衣の生地を油に落とすとゆっくりと底まで沈み、その後時間をかけて浮上する。
  • 菜箸を油の中に入れると、箸の先から細かい泡が静かに上がってくる。

中温(160~180℃)

唐揚げやトンカツ、魚のフライなど衣を焦がさずに中までしっかり火を通す必要がある揚げ物の場合は、160~180℃の中温が一般的である。加熱中の油がゆらゆらとしはじめたあと、1~2分後が中温の状態であるといわれている。具体的には、以下の状況で確認可能である。
  • 衣の生地を油の中に落とすとある程度まで沈むものの、底までは落ちずに浮上する。
  • 菜箸を油の中に入れると、低温のときよりもやや大きめの泡が上がってくる。

高温(180~190℃)

高温とされている180~190℃の油は、2度揚げや衣に色を付けたい場合に適している。油がゆらゆらとしはじめてから2~3分後にこの温度に達するのである。高温であることを確認するには、以下の状況を見極めてみよう。
  • 衣の生地を油に落とすと、中ほどまで沈んだあとまもなく浮上しきつね色に変化する。
  • 菜箸を油の中に入れると、たくさんの泡が勢いよくブクブクと出てくる。

4. 流すのはNG!正しい揚げ油の処理方法

揚げ物で使用した油の処理は、どのようにするのが正しいのであろうか。油は流しに廃棄することは禁忌である。排水溝や環境に多大な悪影響を与える可能性があるのがその理由である。美味しい揚げ物を食べたあとには、使用済みの油は正しく処理するのが大人の心得である。その処理法を説明する。

揚げ油の捨て方1:牛乳パックを利用して捨てる

使用済みの油を処理するのにお役立ちなのが牛乳パックである。パックの中に新聞紙や不用の布などを詰め、そこに油を流し込む。油は冷めてから入れるようにしよう。あらかじめパックの中に水を入れておくとより安全である。油を詰め終わったらガムテープなどでしっかりと封をして廃棄する。

揚げ油の捨て方2:凝固剤を使う

使用済み油の廃棄法としてメジャーとなりつつあるのが、市販の凝固剤を活用する方法である。油の中に凝固剤を投入し、固まったことを確認したのちに燃えるごみとして廃棄する。凝固剤は油が冷めないうちに入れるのが一般的であるが、使用説明書をよく読んで安全に使用するようにしよう。

揚げ油の捨て方3:小麦粉や片栗粉を使う

牛乳パックや凝固剤がない場合には、常備している小麦粉や片栗粉が大いに役に立つ。油と同量の小麦粉や片栗粉を熱いうちに混ぜ、冷めるのを待つ。投入直後はドロッとした形状となる油は、冷めてくると固まって廃棄しやすくなるのである。凝固剤を使用するよりも経済的な方法のひとつである。

揚げ油の捨て方4:廃食用油の回収を利用する

各自治体では、使用済みの油の回収を行っているところもある。居住している自治体のホームページを閲覧し、使用済み油の具体的な回収方法を確認してみよう。リサイクルへの寄与のためにも、こうしたサービスは積極的に利用したい。

5. 揚げ油の上手な保存方法

一度使った揚げ油は、再利用が可能なのであろうか。答えはイエスである。ただし、油が酸化して劣化していないことが条件である。油そのものは腐敗しないが、空気や金属との接触や環境次第では過酸化脂質が生成されやすい状況が生まれる。これによって、健康に悪影響を与える可能性も否定できない。そのため、使用済みの油は適切に処理や保存がされていることが、再利用のための必須条件となる。その具体的な方法を紹介する。

ろ過して保存する

使用後の油は酸化を防ぐためにも、なるべく早めの処理が望ましい。油に含まれている揚げカスは劣化に拍車をかけるので、すぐに取り除いておこう。ろ過するためには、油濾し器やコーヒーのフィルター、キッチンペーパーを用いれば問題ない。油は冷めてしまうと粘りが発生するため、熱いうちにろ過するのがよい。

保存容器に入れて冷暗所で保存する

ろ過後に冷めた油は、容器にしっかりとふたをして冷蔵庫や冷暗所で保存する。シンクの下などが保存場所としては向いているだろう。冷蔵庫での保存は、油が固まりやすくなることもあるので注意が必要である。保存用の容器は、油の熱に耐えられるホーローなどの専用のものを使うようにしよう。瓶などの手ごろなもので済ませようとすると、高温に耐えきれず破損する可能性もある。また、酸化を防ぐためには密閉できる容器が必須である。

保存期間は2週間が目安

適切に処理保存した揚げ油は、目安として2週間ほど保管が可能とされている。これはあくまで目安であり、処理方法や油の状況や保存の環境によって変化することはいうまでもない。油に異臭があったり粘り気が出ている場合は再利用は控えるのが無難である。

6. 揚げ油は何回まで再利用できる?

正しく処理保存した揚げ油は、はたして何度再利用が可能なのであろうか。一度使った油は早めに使いきるのがよいのはもちろんだが、ここでは再利用の目安やリスクについて紹介する。

揚げ油の再利用は3回が目安

揚げ油を再利用する場合には、3回を目安と心得ておこう。油は、調理による加熱や空気に触れることで劣化は免れない性質を有している。使用が3回に満たない場合でも、油の色やにおいをよく確認し、使用に問題ないか見定めてから使用するようにしよう。

酸化した揚げ油を使用するリスク

長時間放置された揚げ油は、酸化によって劣化していく。栄養面での低下に加え、風味も落ちるのは自明の理である。酸化した油が過酸化脂質という毒性の強い物質に変わり、それを口にすることで健康被害が発生する場合もある。下痢や吐き気、胸焼けなどの症状が出るだけではなく、肝臓や血管にもダメージを与える可能性があることをよくよく覚えておこう。

劣化した油の見分け方

それでは具体的に、再利用は控えたほうがよい劣化した油の状況を説明する。

色の変化

本来は無色透明の油に、濃い色が付いていたり揚げカスが浮遊している場合は注意を要する。

いつまでも消えない泡

新しい油ならば食材に含まれる水分によって生まれる泡もすぐに消失する。この泡が残る状態の油は質の低下が著しい証拠である。

180℃で発生する煙

通常は200℃以上にならないと発生しない煙が、180℃前後で発生することがある。この場合も使用は控えるのがよい。

油の粘り気

ヘルシーな状態の油はさらっとしている。油がどろどろと粘り気を帯びたら、すでに寿命と心得る。

異臭

揚げ油に枯草のような異臭がある場合も、再利用には堪えない状態である目安となる。

7. 揚げ油を酸化させずに長持ちさせるコツ

劣化すると健康にも悪影響を与える揚げ油。より経済的に賢く使いこなすにはどんなコツがあるのだろうか。揚げ油を長持ちさせるための工夫を見てみよう。

コツ1:揚げる順番を考える

揚げ油を賢く使いこなすには、献立の順番を考慮するのもひとつの手である。野菜の素揚げからはじまり、天ぷらは野菜から魚介類、肉類の順に揚げる。次にカツやコロッケなどのフライ物、そして鶏のから揚げなど下味を付けたものに使う。最後に残った油は、野菜炒めなど炒め物に使えば無駄がない。油を汚しにくい料理から順にはじめて、無駄なく使いきるのがコツなのである。

コツ2:油を汚しやすい食材を避ける

あらゆる食材は揚げることでより美味しくなるが、なかには油を汚しやすいという性質を有している食材もある。その例が、鶏肉や魚介類、牡蠣である。これらの共通点は、食品の成分が油に吸収されやすいという点である。また、フライに使うパン粉や小麦粉も油を劣化させる要因のひとつである。

コツ3:差し油をする

揚げ油を長持ちさせる方法のひとつに、差し油がある。差し油は、使用済みの油に新しい油を足して揚げ油を長持ちさせる方法である。オイルポットに使用済みの揚げ油を入れ、減った分量を新しい油で補い質を保持するのである。

コツ4:最後は炒め物に使う

オイルポットに入っている揚げ油。炒め物に使う場合は、フライパンにそのまま移そうとすると、たくさん入り過ぎることがある。菜箸を伝わせると量を加減しやすい。

8. 危険はある?揚げ油が泡立つ原因と対処法

揚げ物をしていると、揚げ油に泡が立つ現象が発生することがある。実は揚げ油の泡には二種あり、問題の有無によって分けられるのである。泡立ちの原因や対処法を説明する。

水蒸気が原因の泡

食材を揚げ油に投入した際に、一時的に発生するのがこの泡である。結論からいえば、この泡は問題ない。生パン粉を使用したり、揚げ油が新品である場合に発生しやすくなるのが特徴である。この泡は一時的なものなので心配する必要はないが、泡によって油が吹きこぼれないように食材をたくさん投入しすぎない用心は必要である。

油の劣化

油の劣化によって、側面にたまるような泡が発生する。これは、もちろん問題のある泡である。具材を油から引き上げても残る執拗さが、この種の泡の特徴である。油の質が低下したことを示す信号といってもよいだろう。

卵の影響

揚げ物の衣に使う卵が原因の泡が発生することもある。卵が油に流入して、シャボンのような泡を生み出すのである。この場合は問題がない泡である。卵が油に混ざることによって多少は汚れるが、差し油である程度の対応は可能である。

動物性油脂

肉や魚に由来する脂肪分によって泡立つケースもある。消えにくい泡であるが、1回限りの使用においては問題ない。差し油での対応は可能といえる。

結論

料理初心者にはハードルが高い揚げ物は、油の取り扱いが成功と失敗を分けるカギといっても過言ではない。油を上手に使いこなすことは、揚げ物を美味しく食べるにとどまらず、健康への悪影響を阻止する手段ともなりうる。より長持ちさせるために、揚げ物の献立を立てていくのも興味深いかもしれない。使用から廃棄まで、揚げ油を正しく安全に使いこなし、揚げ物の腕をさらに上げていきたいものである。
インフォメーションマークアイコンオリひとを楽しむための注意事項はこちら
  • 公開日:

    2017年11月19日

  • 更新日:

    2021年6月23日

この記事をシェアする      
  • Facebook
  • Twitter
  • Hatebu
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

人気記事一覧

急上昇
週間

新着記事一覧新着記事一覧